地獄があることを本気にしないならば
主が(行こう)と手を差し出されたので、私は「はい」と言って従いました。
(地獄だよ、地獄に連れて行く。あなたが行きたくない所、見るのも恐ろしいと言って、
足がすくみ、泣きじゃくる地獄だが、伝える使命をもつあなたには、見せなければならない。行こう。)
こうして他に、二人の天使がついて下さり、地獄へ向かって進んで行きました。
広い道だわ……。
たくさんの数えきれない人達が、隙間もなく、いっしんに進んで行く。
行き先も知らないで。
何処へ行くのか知っていたら、決してこの道を歩かないでしょうに……。
手術室が映りました。
そこには、手術台のそばに一人の人が、ぼーぜんと立ち尽くしていました。
「あれは私なのに!!そこで寝ていて、手術を受けているのは私なのに、どうして私はここにいるの?
何故みんな悲しい顔して、寝ている私の体を見てるの?」
医者は「残念ですが」と言った。
手術室の扉は開かれ、外で待っている家族に、死が告げられると、そこは一瞬にして悲しみと涙と、嘆きの場に変わった。
まだ若いわ……あの人、まだ若いのに30代位かしら。
体から出た霊は戸惑い「私はここよ!どうして私が分からないの?」と叫んでいる。
その時、霊の所に、長いカマを持った死の霊が迎えに来た……。
人は死ぬと、もうそれまでの体に戻れずその体から引き離される。
その霊の所に、迎えに来た霊は言った。
「おまえは、我らの国の住人だ。暗闇の住民だ。さあ、連れて行こう――。」
「主よ!!」
私はイェスさまの衣にすがりついて、主よ!!と叫んだ。
「あぁ、主よ、あぁ……。たましいが!!暗闇の霊に引っ張られて、連れて行かれます。
主よ!!かわいそうです!主よ!とっても、かわいそうです!!」
私は泣きました。
(娘よ。さあ、再び地獄を見せてあげよう。天国ではなく地獄を見せるのは、
こういう場所が本当にあることを、世の人々に知らせる為である。
そういう所に一人でも行ってはならないことを、教える為である。さぁ、行こう。)
臭い匂いがするわ。焼ける匂い、熱さ、異様な声、音、騒ぎ。
あぁ、近づいているんだわ。地獄が………。
全身鳥肌が立つ。燃える火が目に映った。 あぁ、あまりの悲惨な姿に、思わず目を閉じて、体が固まってしまった。
動けない…いいえ、動きたくない。行きたくない。もう今すぐ、帰りたい。
そばにいる悲惨なたましいを見て、全身がゾォーッとした。
あぁ、蛇に全身かまれて、食いつかれ、体中穴があいている。
恐くてヘナヘナとしゃがみこみ、動けなくなってしまった。涙が流れっぱなし……止まりません。
天使が二人で私を支え、イェスさまが手を置いてくださった。
(娘よ、しっかりせよ。もっと深みに今日は降りて行かなければならない。)
サタンは笑い、人々のたましいを残虐な方法で苦しめ、叫び、狂った けだもののようです。
なんて苦しくて熱くて、しんどい所かしら……。歩くのもつらい。
一歩一歩、気が遠くなるのを必死でこらえて、力をふりしぼって歩かなくては、一歩だって前へ進めない。
目に飛び込んでくるのは、苦しみの叫びと、残虐な光景だけなんだもの。
その時イェスさまが、ピタッと止まられた。
私は目を上げ、キャッ!!と叫び、イェスさまの衣にしがみついた。
あぁ、どんなにか大きな大蛇が、人々に巻き付き、苦しめていることか。
あぁ、嫌だわ!嫌だわ!助けて!!見たくない!見たくない!
この叫び声を聞くのは、拷問される声を聞くのと同じだわ!!助けて、主よ、助けて下さい。
主は私を支えて、違う場所に行きました。
ここには何故、見張りのサタンが四隅に立っているのかしら?
中では何故、戦っているの?たましいが争い奪いあっているの?
そこでは激しい殴り合いが起こり、罵倒しあっています。
誰もかれもが中央にいたがり、押し合いへしあいで、人々に噛みつく者達、髪の毛をつかみ、むしり…何故たましい同士でこんなに争うの?
四隅にいるサタンは、燃える火を投げつけて、たましいを苦しめ、逃げ出そうとするたましいを、剣で突き刺します。
安心な場所が一つもないのね。
人を盾にして一つの火を逃れても、後ろからも横からも燃える火を投げつけてくるから、激しい人々の争いが起こるんだわ。
逃げようとしても逃げられないから――あっ、一匹のサタンは綱を投げ たましいを引き寄せ、突き刺し始めました。
「逃げようと思うな。ここは地獄だ。何処へ逃げようっていうのか!はーっはっはっ」
大きな口を開けて笑いながら、泣きわめくたましいを見て楽しんでいます。
「ここは一体なんですか?主よ…どうして、こんなひどい事を??」
(娘よ。ここは、まだまだ地獄でも浅い。もっと先へ行こう。)
むせかえるような熱気の中を進みます。
「ギャ――ッ」大声が聞こえ、思わず立ちすくみました。
「ギャ――ッ、止めて!!止めてくれ―――っ!助けてくれ―――っ、助けて―――っ!!!」
私は涙が吹き出しました。こんな、こんな……ひどい事ってある??
太い針山の上を、人々が飛び上がっています。
あぁ……痛いでしょうに、痛いでしょうに。
彼らは、いつまで歩くの??いつまで??いつになったら、ここから出られるの??
分かっているのに、地獄から逃げ出す事など不可能なことは、分かっているのに。
この苦しみが永遠に続く事が、耐えられない。
あぁ、耐えられない。見ているのさえ耐えられないなら、ここにいる たましいは、どんなに苦しいかしら、悲しいかしら……。
急にサタンが、私の前に顔を近づけて言った。
「おまえは、何しに来たんだ。生きているお前が、イェスに連れられ、天使達に守られて何故ここまでやってきたのか。
地獄は俺達の住み家だ。俺達の自由になる国だ。
居心地のいい暗闇、むせかえるような熱気とこの匂い。たましいを突き刺し、いじめる快感をいくらでも味わえる所だ。
人間は愚かなゆえに、そして傲慢なゆえにここに連れて来られるのだ。
自分のために弁護してくれる、救い主をうとみ、毛嫌いし、侮るからここへやってくるんだ。
クリスチャンもここにはいるぞ。ヒ―ッヒッヒッ。
口先ばかりのクリスチャンは、ただ「主よ主よ」と呼ぶだけで御心を知らず、行わず、自分の為に生き、
生きている間、救い主の心を傷めつけた連中は天国へのぼることを許されず、みんな俺達の国に引いてくるんだ。
ワーッハッハッ。地獄は俺達サタンにとっては、最高に楽しい場所だ。」
サタンは両手にたましいを掴み、引きずりながら行ってしまいました。
私が泣いてばかりいるので、イェスさまは私を気遣ってくださいました。
(娘よ。今日はまだ先へ行くよ。出来るだけ見せたいのだ。人々に警告する為だ。)
ある男がいた。
「ここは俺達が考えていたような場所ではない。
生きていた頃、地獄の噂を聞いてはいたが、そんな場所が本当にあるはずないじゃないか。
俺は今、生きてるんだ。そんな、本当にあるかどうか分からぬ地獄の事を、考えている暇はない。生きるのに忙しいんだ。
多くの責任が俺の肩に乗っている。
責任を果たす事にも忙しいし、自分の為に残されている時間は、そんな暗いことは考えたくないんだ。
死――なんてことは、頭から追い出して今だけを生きよう。
ある年代に入れば、自然に考える死について……。病気、事故、不慮の災難、戦争、テロ、自然災害。
人は必ず死ぬという事を、受け入れねばならない時が、人生にやって来る。
誰がこんな場所があると教えてくれたか?
どうして俺は、地獄の噂を聞いても本気にしなかったのか?
これほど悲惨な場所だとは、思いもしなかった。これほど耐えがたい場所があるとは、知るよしもなかった。
助けてくれ!! 助けてくれ!!
せめて残されている家族が俺のように、こんな場所に来なくて済むように伝えてくれ。
その男は語っている間にも、長い爪のサタンに全身かきむしられ、ボロボロになりながら、やっとの思いで語った。
私は見ているのが恐くて、でも聞かなくてはならないので耳だけは澄まし、イェスさまの衣に顔をしっかりつけて聞いていた。
手も震えて、衣を持つ手が震え、歯も震えの為にガチガチして、噛み合わせることも出来ない。
あぁ、まだ下りていくのかしら。気が何度も遠くなりながらも歩かなくちゃならない。
しばらく行くと、人々がはっていた。
傷めつけられて、全身の力も抜け、やっとの思いではって逃げだそうとしていた。
大きなサタンが、たましいを傷つけて楽しんでいる。
一人のたましいの手が私の足に触れた。女だわ…。
「おのれ……!!こんな所に来る事になったのも、あいつのせいだ。
あいつがいなければ、あいつが私を苦しめなければ、私がこんな所に来ることはなかったのに。ちくしょう!!ちくしょう!!
あいつこそ死んで、もっと深い悲惨な地獄へ落ちて行け!!」
たましいは、ある人を呪っています。地獄に落ちたたましいは、体だけでなく心も地獄です。
そこを過ぎて、もっと深い、暗い岩場を歩いて行きました。
地獄に群れているサタン達の気味悪い事、奇妙な姿、おぞましい姿。
人々の騒ぎ、叫び声とこのサタン達の姿が、地獄をいっそう恐ろしいものにしている。
(娘よ、時が来た。帰らなければならない。しかし、再びあなたを連れて地獄を見せよう。
多くの者達は言う。この幻は、勝手にうまく作り出したものだと。主と語り、声を聞く者などいるもんか。
クリスチャンさえも、言う者達が多い。
「楽しもう。一回読めば、それでもういいわ。地獄の話もしんどいし、考えたくないから。
どうせ、救われたら天国に行くんでしょう?私には関係ない、関係あるのは、まだ救われてない人達よ。
その人達こそ読んで、悟ったほうがいいわ。」
愚かな者達よ。
地獄は、本当にあるのに。
時が来て、自分がその場に実際に落とされたなら、その時こそ悟るであろうが…、もう遅すぎる。
どんなに悔いても人生、生きなおすことも出来ないし、悔い改めたからと言って、天国へあげられることもない。
生きているうちに、まだ間に合ううちに、立ち返って恵みをうけよ。悔い改めの実を結ぶ者となれ。
終わりの時代には、サタンがもっともっと、人々を大量に地獄へ連れて行こうと策を練ってある。
しかし救いの道は細き道だが、必ずここを通って救われ天国へたどりつける道が必ずあるのだ。
急げ、まだ間に合う間に。
艱難の時が来たなら、多くの聖霊は引き上げられる。
非常に苦しい時代がやってくる前に、備えよ。 灯と、油を持った5人の賢い娘たちのように。
【 マタイの福音書25:1−13 】
そこで、天の御国は、たとえて言えば、それぞれがともしびを持って、花婿を出迎える十人の娘のようです。
そのうち五人は愚かで、五人は賢かった。
愚かな娘たちは、ともしびは持っていたが、油を用意しておかなかった。
賢い娘たちは、自分のともしびといっしょに、入れ物に油を入れて持っていた。
花婿が来るのが遅れたので、みな、うとうとして眠りはじめた。
ところが、夜中になって、「そら、花婿だ。迎えに出よ」と叫ぶ声がした。
娘たちは、みな起きて、自分のともしびを整えた。
ところが愚かな娘たちは、賢い娘たちに言った。
「油を少し私たちに分けて下さい。私たちのともしびは消えそうです。」
しかし、賢い娘たちは答えて言った。「いいえ。あなたがたに分けてあげるには
とうてい足りません。それよりも店に行って、自分のをお買いなさい。」
そこで、買いに行くと、その間に花婿が来た。用意の出来ていた娘たちは、
彼といっしょに婚礼の祝宴に行き、戸がしめられた。
そのあとで、ほかの娘たちも来て、
「ご主人さま、ご主人さま。あけてください」と言った。
しかし、彼は答えて、「確かなところ、私はあなたがたを知りません」と言った。
だから、目をさましていなさい。あなたがたは、その日、その時を知らないからです。
救われていないたましいのために叫び、とりなす者となれ。熱い心となれるように、主に祈り求めよ。
そして、自分を砕け。
誰でも、自分がかわいいから自我を殺さず、そのままとっておこうとする。
しかし、自己中心なこの自我こそが、砕かれねばならぬものである。
ひざまずいて祈るのを邪魔するのも自我であり、神にたてつき、自己主張を激しく語るのも、あなたの心から出てくる自我だ。
打ちたたき、従わせよ。
終わりの時代だ。 時は迫っている。