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一匹の羊

祈祷院聖会 4日目 夜


川がある。ゆるやかにカーブした川。
私は水の中を潜っていた。


大きなカメに出会った。
カメにつかまって浮かびあがり水から顔を出した。
「あっ、川辺にイエスさまがおられる。」

びしょびしょの私を待っていたのはイエスさまが用意してくれたたき火。
パチパチと燃えています。魚が焼いてあって いいにおい……


《 娘よ、あたたかい飲み物を飲め 》


主は与えてくださいました。


《 びしょびしょの服を着替えなさい。 》


天使が二人来てくださいました。

たき火が燃えてる……パチパチと音がする。
棒にさした魚から汁がおちてジュ―ッと音がしています。
イエスさまは火のそばに座っておられました。


《 着替えてきたか? 》


―はい、主よ。
私はヒラヒラしたきれいなワンピースに着替えさせていただきました。髪も乾いています……。

イエスさまのとなりに席がありました。
でも足元に座ろうかと迷っていると主は となりにおいでと言ってくださって座りました。


《 わが子よ 》


―はい、ここにおります。


<そうだ、あなたはわたしのそばにいる迷子の羊がいるんだ。一緒に迎えに行ってほしい。>


―はい、分かりました。


二人で歩き出しました。
森に手をつないで入りました。暗い森です。
イエスさまは羊の名前をしきりに呼んでいますが、何の返事もありません。

ガサッと音がしたのを私は気付きませんでした。


近くに狼がきていました。笑っています。
狼は私たちの先回りしようと動きだしました。

イエスさまと二人で歩いています。が、急に主が立ち止まられました。
「主よ……どうされたんですか」
主は私に耳打ちしました。


《 見てごらん、あそこに狼のピンと立った耳が見える。道を変えるとしよう 》


いつの間にか狼は一匹ではなく群れで集まっていました。
だからあちらにもこちらにも耳だけが出ていました。
しかし、それもよ〜く目を凝らさないと見えていないんです。
イエスさまだからきっと見つけられたんです。


狼たちは「チェッ!しくじった」と言いました。
よ〜し、崖に追い詰めるとしよう。


イエスさまはしきりに羊の名を呼んでおられます。
すると、大きな鳥が飛んできて、イエスさまの肩にとまりました。手紙を持っています。
主は案内してくれと言いました。


狼たちは私たちの歩く道と平行して群れでつけてきていたので、また計画が失敗しました。
私たちがもと来た道を引き返したからです。森を出て川へやってきました。


草やぶに一匹の羊が引っ掛かって動けなくなってもがいていたのです。イエスさまは近づいて抱きしめました。
あちこちケガをして血を流している羊。


《 わたしの呼ぶ声が聞こえなかったのかい? 》


イエスさまがお尋ねになると「聞こえた」と言ったんです。


「でも言うことを聞きたくないから逃げていたんだ。始めはそれでもよかった。
でも逃げてるうちに声が聞こえなくなった時には、そこがどこなのか全く分からなくて本当に迷子になっていたんだ。


暗い森が恐ろしくて誰もいないのにおびえてばかりいた。
狼が来るんじゃないかと思って苦しみながらここまで来たんだ。疲れて疲れてもう動けなかった。
狼が来て私を見つけたら喰われるしかない―そう思ってたよ。」


イエスさまが聞きました。


《 帰る気があるかい? 》


「もちろんだよ、連れて帰って!」


不平不満でわたしのところに来る者をわたしは喜ばない。
文句の多い者をわたしは喜ばないんだ。
わたしは知ってるよ。あなたの心の中のことは底の底までお見通しさ。


あなたにはわたしを敬う心がない。
わたしをしもべとして扱い、頼み事はするが自分のしたいようにならないと、
すぐにまた勝手に飛びだし自分のやり方を通していく――そういう者だ。


羊はびっくりしました。――すぐに背負われてつれて帰ってもらえると甘〜く考えていたので。


自分の心の中のことなど主が語られるとは思いもよらなかったのです。

「それじゃあ、私をおいていくの?」
羊はびっくりして今度は怒りはじめました。

「あんまりじゃない!それでも牧者なの?!
羊がケガしていたらすぐにかついで聖書にでてくるように喜びながら帰るはずじゃないの?」


――主は言われました。

《 それは悔い改めた羊のことだ。
なぜ反抗的な偉そうな羊をすぐにつれ帰ることができるのか?
また同じ事をすると分かっているのに。そこで悔い改めなさい 》


そう言って向きを変えて歩きはじめました。

「メェ〜〜ッ メェ〜〜ッ」
羊は怒りと がっかりした心で叫び出し「おまえなんか!おまえなんか、神じゃない」と言いました。
するとすぐに黒いものがサッと飛んできて羊は気を失ってしまったのです。


「主よ!!」私はびっくりして叫びました。
「あぁ、どうしましょう。羊が倒れました!死んでしまったの?たましいを取られてしまったの?」


主は《 大丈夫だよ 》


そうおっしゃいました。


《 懲らしめだよ。このまま群れの中にもどることができないから少しの間懲らしめる。
そうでなければ反抗的な羊を群れに戻したとたんに その悪影響がまわりの羊に広がるからだ 》


私は羊の体に手を触れました。
生きています。なんだか幻を見ているようです。


幻の中で羊は追われていました。
狼に、一匹の大きな黒い狼に追い詰められた羊は叫びました。
「助けてくれ〜〜!」

「私が悪かった。もうしない、決してしない。悪いことはやめる。悪いことばは口から出さない」


狼が大きな口をあけて言いました。
「もう遅いさ、イエスは行っちまった。お前が悪いからだ。
お前が自分のしたいように生き、我慢できず、救い主に向かって文句をつけて イエスの心を平気で踏みにじるマネをした。
もう許されるもんか。もう決して迎えになんか来るもんか。覚悟しろ!」


羊の目から大粒の涙がこぼれました。
「私が悪かった。私が悪かった。
死ぬのが嫌だった。訓練なんか嫌だった。厳しいことばかり語る教会が嫌いだった。
自分に死ねだの自我を殺せだの厳しいことばかり言うじゃないか。


もっと楽がしたかった。楽に生きたかった。あ〜めんどうくさい。いつもそう思ってた。
どうして苦労して変わらなくちゃいけないんだ。もうこのままでいいよ。だから逃げたんだ。

まさか追いかけてきてくれるなんて思わなかった。
外へ出たら、のんびり暮らせると思ったんだ。でも群れから離れたとたんに光を失った。安心を失った。


飛び出して良かったという思いは束の間だよ。
でも帰りたくない思いがあった。
またあの厳しい中に戻るのか ついていけないよ。私はダメだ。みんなのようではないし、どうせダメなんだ。


もういいよ。喰ってくれよ。
最後にイエスさまにあやまってから死のう。
『ごめんなさい』さぁ、好きなようにしてくれよ。」

狼がよだれを流して近づいてきたとき、何かを見ておびえて逃げていきました。


イエスさまでした。

羊は目をつぶっていたのです。冷や汗がいっぱい流れていました。
「噛みつかれたら痛いだろうな。こんなことなら自我に死んでいた方がよっぽど良かった。 あーイエスさまの姿をもう一度見てから死にたかった。」


イエスさまは羊の名前を呼びました。
こわくてかた〜く閉じていた目です。なかなか開きませんでした。
全身がこわさでふるえて固〜くなっていましたから。

もう一度、羊を呼ぶ声がしました。


羊は、そ――っと目を開けて、薄眼で見たのです。
目の前にいるのが狼ではなく、イエスさまであることを。

びっくりしてイエスさまに飛びつき大泣きしました。
大きな声で泣き続けました。


《 さぁ、帰ろう。みんなの所へ 》


羊は抱かれ、私も羊のシッポにさわりました。背中をなでました。


歩き出したとき、目の前に大きな明るい太陽。
「わぁ〜きれい」私はイエスさまとにっこり笑いました。
羊はまだ泣いていて顔中、涙でぐしょぐしょ。


笑いながら皆で帰っていきました。